半導体株急落と銀行株下落の背景を、やさしく整理してみる

こんにちは。すずりんです。
今回は、7月17日に日経平均が1日で4,000円以上下落した日、相場で何が起きていたのかを、できるだけやさしく整理してみたいと思います。
この日は本当に強烈でした。相場が荒れた、というより、市場全体が一気にバランスを崩したような1日でしたよね。
SNSでは「ここは買い場だ」という声もあれば、「いったん逃げたほうがいいのでは」という声もあり、見ているだけで気持ちが落ち着かなくなるような空気が広がっていました。
ただ、こういう日にいちばん大事なのは、相場の混乱に自分の判断まで巻き込まれないことだと思います。下落そのものももちろんしんどいのですが、本当に怖いのは、焦って普段と違う行動を取ってしまうことです。
あとから振り返ると、「なぜあのタイミングで買ったんだろう」「なぜあそこで投げてしまったんだろう」と思うことは、投資では本当によくあります。
だからこそ今回は、ただ「怖かった」で終わらせるのではなく、何が起きていたのか、なぜそうなったのか、そして今後どう考えればいいのかを、順番に見ていきたいと思います。
まず大きく崩れたのは半導体株だった
今回の下落で、最初に大きな注目を集めたのが半導体関連株です。
東京エレクトロン と アドバンテスト を見ていきましょう。

7月13日から17日までの数営業日でそろって約10%下落しました。
さらに7月17日だけを見ると、東京エレクトロンは8.17%安、アドバンテストは7.20%安となっていて、かなり大きな売りにさらされていたことが分かります。
さらに、半導体関連の中でも値動きの大きい『キオクシアHD』では、もっと強い下げが起きていました。

6月22日に11万2,700円の上場来高値をつけていた銘柄が、7月17日にはストップ安となり、終値5万2110円まで下がっています。これを割合で見ると、約20営業日で53.7%下落です。
もし1,000万円投資していたとしたら、資産は500万円を下回る計算になります。数字だけ見ても、今回の下げがいかに急で大きかったかがわかりますよね。
ここで多くの人が感じたのは、
「でもAIってまだ伸びるんじゃないの?」
「半導体って不足すると言われていたのに、なぜここまで下がるの?」
という疑問だったと思います。
実際、その感覚は自然です。だからこそ今回の下落はややこしく、単なる利益確定売りというより、市場が信じていた“半導体はまだまだ強い”という前提自体が揺らいだと考えたほうが、流れとしては分かりやすいのかもしれません。
1つ目の原因は、韓国市場でレバレッジが膨らみすぎていたこと

今回の下落の背景としてまず挙げられていたのが、韓国市場で信用取引、つまりレバレッジがかなり膨らんでいたことです。
レバレッジというのは、手元の資金以上の大きさで投資することです。上がっているときは利益が大きくなりますが、逆に下がると損失も一気に膨らみます。順調なときは頼もしく見えても、流れが逆回転した瞬間にとても苦しくなるのが特徴です。
韓国には サムスン電子 や SK hynix といった大手半導体企業があります。
この数カ月間、韓国の個人投資家や若い投資家のあいだで、AI半導体関連株に数倍、数十倍のレバレッジをかけるような熱狂が広がっていました。
つまり、「AIも半導体も強いのだから、ここで大きく勝負したい」という空気の中で、かなり無理をしたポジションが積み上がっていたわけです。
そこに、7月、SK hynix の第2四半期営業利益予想が市場予想を約8%下回ったことが引き金として出てきました。
普通の相場なら、「予想より少し弱かった」で終わるかもしれません。でも、レバレッジが膨らみきっている相場では、その“少し”が命取りになります。
株価が下がると証拠金が足りなくなり、追加でお金を入れられない投資家が強制的に売られます。
その売りによってさらに株価が下がり、また別の投資家が売られる。こうしてロスカットが連鎖していくわけです。

韓国市場の KOSPI が下げたことで、この強制売却の波が広がり、その影響が日本市場にも波及。
韓国の半導体株が崩れると、「半導体全体が危ないのではないか」という見方が広がります。
すると、日本の半導体株にも売りが出る。日本でも信用買いをしていた投資家が苦しくなり、そこでもまた売りが出る。
そんな形で、韓国で始まった下落が日本の半導体セクターにも火をつけた、という流れです。
2つ目の原因は、中国の低コストAIが市場の前提を揺らしたこと

もうひとつの大きな原因として語られていたのが、中国のAIスタートアップが発表した最新の超巨大AIモデルです。
この中国製AIがプログラミングやフロントエンド開発などの分野で、アメリカのトップAIモデルを上回るようなインパクトを与えました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5f9c900f03f9173b75dd9b2734ea32dcea43575b
中国AI新興が新型「Kimi K3」を発表、OpenAIやアンソロピックへの挑戦状
ただ、市場が本当にざわついたのは、性能そのものだけではありません。
もっと大きかったのは、そのAIがかなり低コストで使える可能性があるという点でした。
これまで世界中の企業は、AI競争に勝つために、1枚数百万円もするGPUを何万枚、何十万枚という規模で集め、巨額の設備投資を進めてきました。それだけのお金を投じても成立していたのは、「最強のAIを作れれば、あとで利用料やサービスで大きく回収できる」という前提があったからです。
だからこそ、半導体関連株も強く買われ、「AIが伸びるなら半導体も伸びる」という分かりやすい物語ができあがっていました。
ところが、中国から高性能なのに低コストのAIが出てくると、その前提は揺らぎます。
「そんなに高いGPUを大量に買い続ける必要は本当にあるのか」
「これまでの何十兆円もの投資は回収できるのか」
という疑問が、一気に現実味を帯びてきます。
相場は今の業績だけでなく、「この先も伸びるはず」という期待でも動くことが多いため、その期待の土台が崩れると、株価は大きく見直されます。
今回の半導体株の急落は、まさにそうした期待の修正が強く出た場面だったと考えられます。
そして多くの人が引っかかった「なぜ銀行株まで下がったのか」

今回、投資家の方が特に引っかかりやすかったのが、ここだと思います。
半導体株が下がるのはまだ分かるとして、なぜ銀行株まで一緒に大きく売られたのかという点です。
銀行株はもともと、「日銀の利上げが進めば追い風になる」と言われていましたし、PBR1倍割れ是正や高配当といった期待もあり、比較的安心感のあるセクターとして見られていました。実際、ここ数か月は銀行株が強く、「最後の安全地帯では」と感じていた人も多かったはずです。
それなのに、7月17日のような大荒れの日には、その銀行株までしっかり売られました。
これはかなり理不尽に見えますよね。「良い会社なら下がらないのでは」と思いたくなるのですが、暴落の日の相場は、理屈よりも資金繰りで動くことがあります。そこが市場の難しいところです。
しかし、銀行の業績が急に悪くなったわけでも、利上げメリットがなくなったわけでもありません。
半導体株で損失を出した海外ファンドが、現金を作るために銀行株を売った。
それが大きな理由です。つまり、すでに大きく下がっていて売りにくい株よりも、まだ利益が乗っていて、流動性が高く、すぐに売って現金化しやすい株が選ばれた。その役回りを押しつけられたのが銀行株だった、ということです。
ここは投資を続けるうえでとても大事な感覚だと思います。
良い会社の株だから、暴落の日も安全とは限らない。
むしろ、良い株だからこそ売られることもあります。なぜなら、売りやすくて、利益も出ているからです。初心者のころはここがかなり不思議なのですが、相場では実際によくあることです。
では、これからどう考えればいいのか

ここからは、上記の考え方をもとに、今後の見方を整理してみます。
大事なのは、短期・中期・長期を分けて考えることです。
相場が荒れているときほど、「今日どうするか」と「数か月後にどう見るか」と「数年単位で何を探すか」を一緒にしないほうが、頭の中が整理しやすくなります。
短期では、まず生き残ることを優先する
短期では、まず生き残ることが最優先です。
暴落のあとには、一時的に反発して「底打ちかもしれない」と感じる場面が出てきます。でも、それが単なる自律反発で終わることも少なくありません。
それは「落ちてきたナイフが床で1回跳ねただけかもしれない」という表現がしっくりきます。
かなり印象的な言葉ですが、本当にその通りだと思います。短期では無理にヒーローになろうとせず、まずは現金を守る。
信用取引は特に慎重に扱う。
その姿勢が大切。
わたしも今持っているポジションは、リバウンドしたところで、一度少し手放したいと思っています。
そして、大きな下髭を付けた日に買い直したいと思っています。
中期では、売られすぎた優良株を落ち着いて見る
中期では、今回のパニックで売られすぎた優良株に目を向ける考え方があります。
メガバンク株のようなバリュー株が候補として挙げられます。
銀行株の下げが業績悪化ではなく、ファンドの現金化の巻き添えによるものだとすれば、売りが一巡したあとに見直される可能性は十分あります。
もちろん、何でもすぐ飛びつけばいいわけではありません。
相場が落ち着き、チャート的にも「底を打ったかもしれない」と見えるタイミングを待つことが大切です。
長期では、AIを使って伸びる企業を見る
長期では、AIを作る側だけでなく、AIを使って伸びる側を見るという視点が大切です。
これまでは、半導体や装置メーカーのような“AIの土台を作る側”が市場の主役でした。
しかし、もし高性能なAIが安く使える時代になっていくなら、本当に伸びるのは、そのAIを使って新しいサービスを作る会社や、社内業務を大きく効率化して利益率を高める会社かもしれません。
AI関連と聞くと、つい半導体株だけを思い浮かべがちですが、その先まで見ていくことが、これからはますます大事になりそうです。
まとめ
暴落の日に必要なのは、勇気より平常心かもしれない
今回の相場は、たしかにしんどい場面でした。資産が減っていくのを見るのは、投資に慣れている人でも普通につらいですし、投資を始めたばかりならなおさらだと思います。でも、こういうときほど大事なのは、市場の大きな声に自分の心まで引っ張られないことです。市場が大騒ぎしている日に、自分まで一緒に大騒ぎしなくてもいい。そう考えるだけでも、少し見え方は変わります。
今回の下落は、ただ「なんとなく不安だから売られた」わけではありませんでした。
- 韓国市場でレバレッジが崩れたこと
- 中国の低コストAIが半導体投資の前提を揺らしたこと
- そして半導体で傷んだファンドが現金化のために銀行株まで売ったこと。
こうした流れが重なった結果として起きたものだ、というのが正解に近いと思います。
だからこそ、
- 短期では無理をしない。
- 中期では売られすぎを見極める。長期では次の主役を探す。
- そして何より、暴落の日に自分の心まで暴落させない。
暴落の最後には、富のチャンスがあります。
急がず、慌てず、冷静にデータを見て、チャンスを狙っていきましょう!
